展覧会/プロジェクト “境界を跨ぐと、”
Exhibition / Project “To the Other Side of the Boundaries,”

「第6回 都美セレクション グループ展」展示風景
東京都美術館 2017年
撮影:ただ(ゆかい)

Installation view in Tokyo Metropolitan Museum
Photo: Tada(Yukai)

開催趣旨

隣接する武蔵野美術大学と朝鮮大学校の2 つの展示室を会場に、両校の境界にある壁(塀)に橋を仮設しつなげた展覧会「突然、目の前がひらけて」は、どのような橋を仮設するかを通して、対話をテーマに企画したプロジェクトでした。
“私たちの間にある隔たりとは何か?”と、双方の立場を明確にし、違いをあえて強調する壁の存在は、一方では自身を守るための壁であったにもかかわらず、対話の中でしばしば「私」の足元をぐらつかせました。「私」はいま誰の物語(それはイデオロギー、歴史、立場から発現する)を語り、一方で相手は「私」をどのように捉えて言葉にしているのだろう。
突然、目の前がひらけて境界を跨ぐと、それぞれが見た風景はまったく別のものでした。

◉どこまでが私なのだろう
─自分と“何か”との境界 ──
その”何か”とは、”共同体” であったり、”敵”であったり、あるいは自分以外の”他者” であったり、作家によって様々です。
この展覧会は、作家それぞれが対話を持ち帰り、その”何か”との距離をそれぞれの方法で測定し、境界線を引き直そうというものです。
自分以外の人の物語の引き受け方をインタビューして聞いてみたり、自分の夢に出てくる他者と現実に存在する他者を引き合わせてみたり、半島を前に先祖の郷愁をなぞってみたり、その方法は様々です。
あの対話を経て、今一度大きな物語の引き受け方を模索したり、その距離を問い直すこともできるかもしれない。
私たちが共にいることは、異質の価値観を持つ他者をみとめることで自分の中に揺れを内包し、既存の概念に対し自身の視点を持つプロセスです。
そのプロセスを個人が試行することによって、人間が長い時間を生きるために作った社会基盤やたくさんのルールを持続させていくための代替可能なパーツではなく、余白の世界を担保し、既存の価値観に問いかけることができると思います。

BOOK「境界を跨ぐと、」
発行日:2017年6月25日
執筆者:市川明子、鄭梨愛、土屋美智子、灰原千晶、李晶玉
寄稿者:北田暁大、石川卓磨、gnck、成相肇、韓東賢
発行者:「突然、目の前がひらけて」制作委員会
(市川明子、鄭梨愛、土屋美智子、灰原千晶、李晶玉)
編集者:「突然、目の前がひらけて」制作委員会
写真:加藤健(p.12)
デザイン:本郷かおる
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–出展作品–

展覧会「境界を跨ぐと、」
2017年6月25(日)ー7月6日(木)
9:30ー17:30
6月20日(金)は20:00まで開室、7月3日(月)は休室
いずれも入室は閉室の30分前まで

会場:東京都美術館 ギャラリーC
主催:突然、目の前がひらけて制作委員会 (市川明子、鄭梨愛、土屋美智子、灰原千晶、李晶玉)、 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
助成:野村財団、朝日新聞文化財団
協力:キヤノン株式会社、足立区生物園
※この展覧会は、第6回都美セレクショングループ展で選出された展覧会企画です。